2013年8月27日火曜日

杉野保・杉守千晶『フリークライミング・テクニック』

今まで、いろんなテクニックについて解説してきた。登れれば楽しいし、楽しければそれに越したことはない。しかし、スポーツと冒険の両面の性格を持ち、自然を相手にするクライミングだからこそ、もう一歩突っ込んで豊かさも追及してほしい。最後に、より豊かで創造的なクライミングをするために知っておいてほしいことについていくつか書いてみたいと思う。

杉野保・杉守千晶『フリークライミング・テクニック』(山と渓谷社、1996年)



杉野さんの解説書。仕事で東京に行ったついでに買ってきた。

テクニックについては目新しいことはないんだけど、上記の一節から始まる「テクニッック以外の大事なこと」と題された巻末のエッセイがすごく良い。

登るルートをいかに選択するかは、どれだけ豊かなクライミングを体験できるかを大きく左右する。そして、誰かが付けた星の数が、自分に素晴らしい体験をさせてくれるルートを指し示しているとは限らない。

そう、どれだけ豊かな体験をできるかが、大事なんだ。

2013年8月26日月曜日

小川山レイバック@小川山

土曜日は仕事につき、日曜日に小川山。いつものパートナー松氏と。快晴の予報のはずが、あれ?起きると雨。信州方面の予報も雨。あれれ?

雨雲レーダーを見ると、小川山周辺は薄い。これは登れるはずと、出発。

廻り目平に近づけども近づけども雨は上がらず、結局、

雨でも登れる《小川山レイバック》へ。貸し切りでした。


《小川山レイバック》(5.9)

いつかは登りたいと思っていた《小川山レイバック》。キャメロットの3番までと、マスターカム、あと、キャメロットの1番と2番を松氏から借りて、フラッシュトライ。下の方で、赤×2と黄色を消費。テラスのすぐ上に青、テラスから手を伸ばして黄色。数歩上がって、マントル直前でもう一本セットしたかったけど、赤と黄色はすでにさようならしていて、小さいのは入らない。しょうがないのでそのまま登った。後で冷静になって考えたら、マスターカムの6番が入らないことはなかった。スラブを上がった先にカムを入れて、スラブを左にトラバース。雨が吹き込んでて滑りそうで怖かった。トラバースして、テラスの縁に手を伸ばしたら、ベチャ!水たまりに手を突っ込んだ。でもしょうがないので、そのままマントル返して、テラスに上がって終了。フラッシュ成功。スラブの上にカムを入れたせいで回収が大変だった。

この後、松氏もフラッシュ成功。終始レイバックで。良いものを見せてもらいました。

ジャミングとプロテクションを練習する良い機会なので、その後はトップロープで。テラスから先もステミングせずにフットジャムで登ってみたり、カムが1セットだったらどうするか試してみたり、左足もフットジャムしてみたり、4回くらい登った。1セットだったら、テラスのすぐ上に青、その上に赤、その上に黄で、テラスの下にマスターカムの6番、その下にキャメの75、その下にマスターカムの5番かな?下半分は万全とは言えないかも。左足フットジャムは痛すぎて断念。

あと、ジャミング禁止でレイバックで登ったり、ナッツを使ってみたり、最後はクラックに触らずにステミングのみで登ってみたり、、、という予定だったけど、雨で停滞していた矢崎さんの講習グループが上がってきた。最後にレイバックで登って、交代。レイバックはしんどい。これでプロテクションをセットしながらフラッシュした松氏はすごい。


ここでクライミングは終了。後は、前回失敗したクジラ岩からお殿様岩へのアプローチを確認。今回も少々間違いながらも、到達。トリトンの左を上がるのが正解の様子。お殿様岩で、《しぐれ》、《陽の当たる場所》、《予期せぬプレゼント》といったワイドクラックを見学。《陽の当たる場所》は本当に陽の当たる場所でした。


以上、雨予報にも負けずに突入して正解だった。

2013年8月19日月曜日

初めてのリバーサイド@小川山

キャンプ場の対岸の川に近いエリアには良いイメージがなかったんだけど、リバーサイドにはすっきりしたスラブがあるらしいということで、早朝に1人で行ってみた。

《ブラックシープ》(5.9)

まずは、100岩で2つの星がついている《ブラックシープ》。オンサイト。後からネット情報をあさって見たら、多彩なムーブで面白いって評判みたいだけど、普通だったような...
いやきっと、ロープソロで緊張してたから楽しめなかっただけだな。そうにちがいない。もう一回登れば楽しさが分かるはず。


《アウト・オブ・バランス》(5.9)


アウト・オブ・バランス

こちらは一直線に走ったクラックがかっこいい。オンサイト。


登った先で待つ景色もいい。いちばん右下の岩が、親指岩。


《マダム・バタフライ》(5.10b)

左の《アウト・オブ・バランス》に近くて、左の方のホールドを使わないように気を使った。出だしはアンダーにSLCDを2発ぶち込んだ。オンサイト、と言いたいところだけど、《アウト・オブ・バランス》の下降中にホールドを観察してしまった上に、ホールドがことごとくチョークで真っ白だったので、これをオンサイトと呼んでしまっていいのか自信がない。まあ、使わないホールドまで真っ白だったから、トラップありってことで、プラマイゼロかな。下降中に一生懸命掃除したら、豚毛ちゃんが早くも短くなってしまった。



といったところで、終了。この中では《アウト・オブ・バランス》がいちばん面白かった気がする。改良したソロシステムの評価はできたので、あとはボルダラーに合流。リバーサイドは他のスラブも面白そうだから再訪したい。


ボルダーは、いろいろ。

ウィスキーボトルの90番クラック(2級)を苔と恐怖で敗退。ウィスキーボトルとウィスキーキャップの間の99番チムニーを幾度も。これは何度登っても面白い。

分岐岩で、8番マントル(10級)、7番《分岐右》(4級)、5番《分岐左》(9級)、4番カンテ(8級)。6番《分岐中央》(3級)は敗退だっけ?忘れちゃった。

それから、石の魂で、12番《右端》(5級)、11番(6級)。それぞれに結構面白かった。10番(5級)は一本指ポッケでパキリそうだったので、敗退。《A.I.T.》(初段)も触ったけど、下地が出っ張った岩だか木だかで怖い。

クジラ岩で《フィン》のクラックバージョンフレーク上のホールドもフレークのアンダーも触らずに登ってみたら楽しかった。スタートは右肩と右足を入れて、Offwidthってあんな感じなんだろうか?両手を離せたよ。そこから先はハンドとフィストとフットジャムと膝で。5回くらい登ったけど、何度登っても楽しかった。何度登っても息も絶え絶えになったけど。あれを一日100回くらい登ったら体幹が鍛えられそう。降りるのがめんどくさいけど。あ、クライムダウンすればいいのか。100往復したら最高のトレーニングだな。

13番(6級)は何とか登れた。14番マントル(4級)は意味不明。16番ダイク道(5級)は苔と恐怖で敗退。17番(6級)は上部核心で死ぬかと思った。

トリトンで、77番SD(5級)、78番(7級)、79番(6級)、80番(5級)。76番トラバース(2級)に挑んだものの、ムーブも解析できず、敗退。

プーシェの左の84番《三角マントル》(5級)は相変わらず難しいけど、再登。ダッシュで助走をつけてやったら、左のガバフットホールドを使わずに登れた。助走なしだと難しいけど、打ち込めばできそう。マントルのトレーニングに最適。次回は登る!

以上





2013年8月10日土曜日

夏の小川山合宿2013

小川山合宿で新たに登ったルート及び課題、登れなかったルート及び課題並びに見学したルートの記録。


○登ったルート

・左岸スラブ

《ジャーマン・スープレックス》(5.10c)

ジャーマンスープレックスの核心部

3日目。ロープソロで初めてRP。核心の終わりを告げる左足ポケットに足を突っ込むのが難しかった。この日の3トライ目は、ポケットに左足が入ったものの、左手がすっぽ抜け。次の便でRP。右のフレークを掴んで上に上がってからは、右のカンテを取るまで集中しまくり。これは面白い。

・そらまめ下部スラブ

《生木が倒れたよ》(5.9)
マスターOS。ロープソロ。

《三色すみれ》(5.10a)
フラッシュ。ロープソロ。

・スラブ状岸壁

《かわいい女》(5.8)
マスターOS。

《穴があったら出たい》(5.10a/b)
2トライ。面白い。エッジ。

《放浪癖》(5.10b)
2トライ。RCCボルト×2のルート。面白い。左トラバース核心。

《Song of Pine》(5.8)
フラッシュ。

・妹岩

《カシオペア軌道》1P目(5.10b)B&NP
2日目、5トライくらい。ロープソロでやろうとして、ロープの繰り出しが上手く働かなくて、ビレーしてもらった最初のトライでRP。オリジナルの左抜け。ボルトは2本で、思ったよりカム頼り。クラシカルなルートは本当に面白い

《愛情物語》(5.8)NP
前のシーズンにナチュプロの練習ってことで取り付いて、途中で本気で落っこちていろんな意味でビビったルート。今回は問題なくRP。カムのセットの練習で、取れるところにはできるだけとる戦略で、キャメロットの3番までとマスターカムをほぼ全部使い切った。

・ガマスラブ

《ガマルート》5P(5.8)あたりを適当に
時間優先で、登れそうなところを適当に。途中歩きがあるのと、終了点の落ち着きどころがない点で、《春の戻り雪》の方が僕は好み。

・最高ルーフ左の岩
アプローチで迷ってかなり遠回りした。ウイスキーボトルから上がるのが分かり易そう。

《白糸》(5.10c/d)
マスターOS。下部のカンテ左に出るところが難しかった。ここは激しいリーチムーブで解決

《ナデシ》(5.11a)

ナデシ

2トライ。出だしから厳しく、1本目のボルトのクリップが厳しい。マスダーだと、左手のすっぽ抜けそうなスローパーを保持してかけるので、なおさら。そこから、2本目のボルトまでが核心部。マスター・オンサイト・トライはここで失敗。2トライ目でRP。核心部は、手が両方悪い中での緊張感満載の左足の立ちこみ。左手はほとんど意味なし。右手は、RP時は、斜めホールドを半分クローズド・クリンプで、親指を半分エッジに引っ掛けて左下に引いた。RP後に核心部だけ練習した時は、エクステンディッド・グリップで、真下に引いた。ほとんどパーミング。そしたら、RPした時より楽に登れた。斜めに引くと重心を左に移せなくて、いつまでも右足の荷重が抜けない。強引に身体を上げようとすると、左足のエッジと右足のステミングになって、右足をトントンしないといけなくて、辛い。真下に引くと、右足を切って左足に完全に乗っかることができて、立ちこみも楽。


○登った課題

・林の中のボルダー

《ダイレクトフィン》(3級)
これは面白い。そして難しい。両手プッシュで斜めのホールドに手に足。上部スラブは結晶を激しくクリンプしてずり上がる。めちゃ怖い。

《フィン》(6級)
これは面白い。ハンド、フィスト、フィストのジャミング。《ダイレクトフィン》と同じくらい面白い。同じくらい難しかったけど。体感3級。

クジラ岩の黒本10番(10級)、11番(6級)SD、12番マントル(8級)。タイコの太鼓(8級)、32番(9級)、33番(7級)。スパイヤー岩の34番トラバース(8級)。

ホワイト・ブロックの《ホワイト・クラック》(7級)。出だしフィンガージャム。難しかった。

穴プーシェ(7級)。高くて怖かった。

スラプーシェ(6級)、88番スラブ(7級)。

三角マントル(5級)。これは難しい。何もないスラブから何もないリップ上をペシペシたたいてマントル。本気出した。

ウィスキーボトルの95番(6級)。小川山らしからぬハングで、ムーブは若い人に受けそう。しかし、トップアウトするとめちゃ怖い。

96番マントル(8級)。これまた、トップアウトするとめちゃ怖い。

98番カンテ(6級)。

99番チムニー(10級)。
これはめちゃ面白い。初めて使ったチキンウィングがバチ効きだった。あまりに面白いから2回も登ってクライムダウンまでしちゃった。

ウィスキーキャップの100番(7級)、101番マントル(10級)。

102番(9級)。ノーハンドでいけそうだったから頑張ってみたものの、最後の方で手を出しちゃった。

・石楠花遊歩道エリア

扇岩の《左うちわ》(5級)、蛇腹(4級)、もぐり岩の《ひみず》(10級)、《もぐら》(6級)。《もぐら》は難しい。

忘却岩の20番マントル(2級)。
怖かったー。渾身の力を出して結晶を握り倒して這い上がった。死ぬかと思った。4トライくらい。

・水晶スラブ下ボルダー

入り口岩の45番カンテ(8級)、46番マントル(5級)、47番マントル(7級)、48番マントル(7級)。47番だけが異常な難しさ。結局、上の方のカチを持って、地ジャン気味にリップに飛びついた。だめかな?

チビチビ岩の43番(10級)。44番は苔敗退。富士山岩の《ノーハンド登山道》(10級)ノーハンド、簡単。40番マントル(8級)、面白い。41番は苔敗退。隣山岩の35番マントル(8級)、36番スラブ(6級)、37番(5級)。

犬岩の28番ルーフ(5級)。これは難しかった。胸を岩で擦って痛かった

不可能スラブの9番カンテ右(5級)。前回敗退した課題。ようやく登れた。カンテをペシペシで面白い

・雨月岩周辺

《カモシカカンテ》(5級)。

11番のマントル(4級)。これは厳しかった。数度落ちた末に、全身に擦り傷を作りながら必死で完登

14番のマントル(6級)。

15番のトラバース(4級)。スタートホールドがイマイチ分からず、顕著なガバを左手で持ってスタートした。更に右にもホールドがあったけど、甘いカチと薄いピンチから遠い一手を出すことになって、そこからやると段はありそう。てことで、ガバから。面白かった。

・屋根岩ボルダー

チビ岩の4番(4級)。
チビで、地味で、居心地が悪くて、怖くて、でもダイナミックで面白かった。マントルも悪い。二度とやりたくない。

ピラミッド・タキュールの《左面中央》(9級)、《ピラミッドタキュール》(7級)、カンテ右(10級)。トポを見ると、凄くカッコいい岩。実際見ると、果てしなく小さい。でも形はカッコいい。大きさが3倍くらいあると良いボルダー課題になりそう。登ってみると、結構面白い。下地も良いし。

マッターホルンの14番《凹状壁》(10級)、15番《カンテ壁》(10級)、16番《北壁ルート》(10級)、17番《ヘルンリ稜》(10級)。

三角岩の25番(8級)、24番《大三角》(4級)。これは厳しかった。

皐月岩の32番マントル(4級)。

霜月岩の36番《落葉》(5級)。上部に上がれば問題ないかと思ったら苔が...

34番スラブ(3級)。
中間部のポケットに手が届けば何とかなると思ったら、ポケットが意外と悪くて、足もダイクから外れそうで怖かった。そこをなんとか保持して、上部のガバポッケに手が届けば何とかなると思ったら、ポケットがアンダーでしか効かなくて、決死の覚悟で一歩上がってアンダー保持の体勢に入った。死ぬかと思った


○登れなかったルート

《ワイルドタジヤン》(5.10c)
しけしけで敗退。既に2日で2トライ。

《デロリンマン》(5.11c/d)
ライン取りがイマイチ不明ではあるが、いろんな情報に照らすと、左下のフレークは使わずに真下から直上が正解か。ムーブは一通りできた。これは登れる。


○登れなかった課題

入り口岩の《ラブリートラバース》。これは厳しい。そして、指が痛くなる。

屋根岩ボルダー・マッターホルンの《横断ルート》(5級)。これは厳しい。そして、指が痛くなる。

屋根岩ボルダー・皐月岩の《花豆》(初段)。地面から両手をピンピンに伸ばしたところのリップ状に一本指ポケットと結晶があることを確認した。これは厳しすぎる。


○見学したルート

左岸スラブの《ピンチ》から《YMO》まではスラブで面白そう。しかし、《ピンチ》から《ビッグモー》までは1本目のボルトが高すぎて気軽に取り付けない。

《トムといっしょ》はフェース。《雨がやんだら》は薄かぶり。《あせらずいこうぜ》、《チャンス》は垂直のエッジ。

ガマスラブ近くの続おじさん岩の《ぶんぶく》、《すったらもんだら》、《おたんこなす》、《ひょうろくだま》は面白そう。

ガマスラブ周辺、《ウィスキー・キャット》、《ごめんねエっちゃん》はフェース、《幻を追う人》(5.11a)、《門番の娘》(5.8)、《KC'S Banana Cake》(5.10a)はスラブ。

最高ルーフの岩の《笠間のピンキー》(5.10c)。フィンガークラックから、スラブ。楽しそう。


○総評
成果とよべるものは、《ナデシ》、《カシオペア軌道》くらいか。カムの練習として《愛情物語》は良かった。《ガマスラブ》でマルチの練習も良かった。

あとは、ロープソロのシステムを岩場で試してみて、その良さと課題が見えたのも、大きな成果。これについては、追々書くつもり。

新人の案内がメインだったから、今回の成果のなさはしょうがないでしょう。今後に期待。